『そして誰もゆとらなくなった』とは?基本情報

『そして誰もゆとらなくなった』は、『桐島、部活やめるってよ』『正欲』などで知られる直木賞作家・朝井リョウによるエッセイ集。『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』に続く「ゆとりシリーズ」第3弾にして完結編です。シリーズ累計はなんと30万部超え。

項目内容
著者朝井リョウ
出版社文藝春秋(文春文庫)
文庫発売日2025年7月8日
ページ数384ページ
シリーズゆとりエッセイ第3弾(完結編)

文庫版には書き下ろしエピソード「ホールケーキの乱、その後」「ロスト・イン・パーソナルトレーニング」も収録。単行本で読んだ人にもおいしい仕様になっています。

「文庫版は持ち運びやすくて通勤読書にもピッタリ。…と言いたいところですが、電車で読むのは自己責任でお願いします(理由は後述)。」


感想:めちゃくちゃ面白かった。ただし外で読むな

結論から言うと、めちゃくちゃ面白かったです。

ボクは電車の中や行列に並んでいるとき、つまり外出先で本を読むことが多いんですが、この本に関しては完全に選択ミスでした。笑いを堪えるのが大変すぎる。口元がニヤけるのを抑えながらページをめくる人間は、傍から見たら完全に不審者です。帯に「頭を使わず読める」とありますが、正確には「頭は使わないが、表情筋を全力で使う」エッセイです。

家で一人で読むことを強く推奨します。

刺さった名言:「あのときの自分、死ね」の連続

笑えるだけじゃないのがこのエッセイのすごいところで、ふいに刺してくる一文があります。ボクが一番共感してしまったのがこれ。

本当に、人生とはいつだって「あのときの自分、死ね」の連続だ。

わかる。わかりすぎる。布団の中で過去の自分の言動を思い出して悶絶する、あの感覚を一行で言語化されてしまいました。

もうひとつ共感したのが、旅行に行く理由は「人生のスタンプラリー」を押すためという感覚。「行きたいから行く」というより「行ったという事実を集めたい」。旅行の動機をここまで正直に書いてくれる作家、なかなかいません。

注意点:うんこネタが多め

正直に書いておくと、本書はうんこネタの登場頻度がかなり高いです。朝井リョウのお腹が弱いことはシリーズ読者には周知の事実ですが、今作も健在。ボクは笑いましたが、この手の話が苦手な人は読む場所とタイミングを選んだほうがいいかもしれません。逆に言えば、それくらいしか欠点が見当たらない一冊です。

甘党対決:筆者の敗北宣言

表紙からして、荒野でホールケーキを食べている時点で察してほしいのですが、朝井リョウの甘党っぷりは常軌を逸しています。ボクもかなりの甘党を自認していますが、これは完敗です。ホールケーキへの執念を描いたエピソードは本書のハイライトのひとつ。文庫版の書き下ろし「ホールケーキの乱、その後」まで含めて、甘党なら必読です。

作家・朝井リョウのイメージが180度変わった

『正欲』のような鋭く重いテーマの小説を書く作家——それがボクの中の朝井リョウでした。このエッセイ集でそのイメージが180度変わりました(笑)

平成生まれ初の直木賞作家の素顔が、こんなにポンコツで、こんなに全力でふざける人だったとは。むしろ「この振り幅こそが朝井リョウの才能なのでは」と思わされます。小説しか読んだことがない人ほど、ギャップにやられるはずです。

まとめ:こんな人におすすめ

  • 通勤・通学で疲れていて、何も考えずに笑いたい人(ただし車内で読むのは自己責任で)
  • 『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』が好きだった人
  • 朝井リョウの小説しか読んだことがない人
  • 「もう社会人◯年目?詐欺?」と思っている同世代

帯の「えっ、もう社会人15年目?詐欺?」というコピーに少しでもドキッとしたら、それはもう読むべきタイミングです。シリーズ未読でも本作から問題なく楽しめますが、面白すぎて結局3冊全部買うことになるので、財布の準備だけしておいてください。

評価:★★★★★(5/5)

「シリーズはどこから読んでもOKですが、時系列で読むと朝井リョウの『成長しなさ』が味わえてより楽しいです。ボクのおすすめは刊行順読破です。」

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キリュウ
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